No.169 治療主導から療育の時代へ

昨日から議論漬けの時間を過ごしたり、
尊敬する知人の読書サマリーを拝見して、
一気に本を読み進めたり、
と、インプットとアウトプットの繰り返しから
ある共通項を見出しました。

それは
治療主導の時代から
療育の時代に変化したな・・・と。



【大ナタを振るう外科的手術】

書籍『入門 組織改革 生き生き働ける職場を作る』
の中に
バブル崩壊後の1990年代、
日本の企業が振るった大ナタについて
触れられていました。

日本の企業は落ち込んだ収益を回復させるために、
合併、提携、戦略の変革、業務の手順・技術の変革、
成果主義の導入による「制度」の変革、など、
企業・組織のハードな側面に大ナタが振るわれ、
大規模な
外科的手術が施されてきました。


私の専門職能である医療、介護の業界も、
制度の改革、見直し、診療報酬改定、
加算の追加、見直し、人員増のための資格制度など。

ハードな側面での
外科的手術
は、制度として、箱物としては
なんとか運営という形になっています。



【おざなりになる体質改善や健康管理】

一方で、同書籍には
外科的手術だけでは健康を維持できず、
日頃の体質改善や健康管理の必要性について
触れられていました。

外科的手術を受けただけでは、
人は健康にはなれず、
「人」や「関係性」を含めた組織の
体質改善が必要になってきます。


医療、介護業界でいうと、
制度や仕組み、報酬改定、法律などは整備されたけれど、
そこで働く人たちの体質改善や風土改革が
実現されていなければ、
健康体とは言えないという
わけです。

そのためには
漢方薬のような役割や、
健康診断のようなチェック機能
が必要です。




【療育のススメ】

私は昨年11月から
発達障害当事者の会のサポートとして参加させて頂いております。

現在、障害者雇用の積極的導入を国が叫んでいて、
『職業訓練』が制度の一つとして存在します。
パソコン技能や簿記検定など、
仕事をしていくために必要な技能を習得できる
国の制度や仕組みです。
上記で言うところの
外科的手術です。
それはとても大事なので否定はしません。

私が課題に感じるのは、
技能を身につけさせたら、
そのまま海に突き落としている感じがしてならないのです。
ライフジャケットも着せずに、
さあ!行ってらっしゃい!
大丈夫、人は浮くから
と言わんばかりに・・・。
しかも、波打ち際からではなく、
いきなり海の中心から!!



私は、今必要なのは
『療育』
だと考えます。

今日の発達障害当事者の会で、
ある参加者の方が私の意見をそう要約してくださいました。
(Mさんありがとうございます)


・・・・療育とは・・・・
心身に障害をもつ児童に対して、社会人として自立できるように医療と教育をバランスを保ちながら並行してすすめること。(日本大百科全書)
(児童とありますが、大人も同様)


制度化や、変革などの外科手術は必要です。
しかし、その前提となるのは
自立できるような教育(体質改善)をバランスよく進めることにあると
思うのです。

社会人として自立するのは、即ち『健康』を意味します。
これは発達障害の方々に限った話ではありません。

早期離職した新卒者。
転職を繰り返している大人。
これから社会に出ていく、
スマホばかりいじっている大学生。

誰に対しても
外科的治療と体質改善は必要になります。


【長期的な体質改善】

なぜ「人」や「関係性」を含めた体質改善がなぜ必要か、
同書籍では、
1. 活き活きとできない社員
2. 利益偏重主義
3. 個業化する仕事
この3点を理由としてあげています。

この3つは健康体であるかの指標だと、
私は考えています。

私がお世話になっている
発達障害当事者の会の皆さんは、
自分自身がどう体質改善をしていけば良いか、
毎回、問題課題と向き合って、
全員で解決できる考えを共有しています。
(もう5年だそうです。)
素晴らしい協働関係だと思います。

この組織のような取り組みを
一般の企業でできたなら、
どんなに健康的な組織開発が実現するでしょうか。


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主導されるべきは、
健康体としての自立を進める『療育』であって、
制度や業務改革、ハード面の整備などの『治療』は、
療育が成立してはじめて意味のあるものになると考えます。